2025 バングラデシュ海外研修

2025年1月31日から2月7日に、本ゼミの11名(学部4年生:6名 学部3年生:5名)がインド洋・ベンガル湾の最奥部に位置し、 大河の下流であることから、国土の50%が標高6〜7m以下にある、バングラデシュに赴き、研修を行いました。 バングラデシュでは地方都市コックスバザール、首都ダッカの2都市を訪れ、コックスバザールではロヒンギャの難民キャンプ、 ダッカでは経済特区や政府系機関の訪問など、現地を訪れたからこそできる貴重な経験を得ました。 以下に、その様子と感想を共有いたします。

現地での活動

難民キャンプ周辺のローカルコミュニティー訪問

コックス・バザールの現地の農村を訪れました。この地域は難民の受け入れ地域と距離が近く、 難民のホストコミュニティーと言われています。2017年のロヒンギャ危機により、難民が流入したことで、 経済に大きな影響を受けている地域です。

現地に住む女性の方から直接お話を伺うことができました。 難民が流入したことによって、commodityの値段が上昇してしまったり、難民によるinformal labourによって労働機会が奪われてしまったり、 難民の居住地のための森林伐採によって水が不足してしまったりと身近な暮らしへ与える問題は深刻でした。
現地の女性の方の表情からも、一刻も早い解決を願っているようでした。また、コックス・バザールは海岸地域ということもあり、 農作物を育てるには土壌の環境が悪く、少ない水で栽培できるbetel nut treeや噛みタバコの葉が主要作物でした。

サーベイトレーニング

村の水汲み場

チッタゴン大学との交流

噛みタバコの葉

左の写真は、村の幼い女の子たちが普段水を汲んでいる場所です。 実際に水を入れた銀色の壺を持ってみましたが、10歳前後の女の子が坂の上の居住地に運ぶには重すぎるほどで、 大学生の男子が持ち上げるのにもなかなか苦労しました。
また、農村には子供は非常に多かったことが印象的でした。 彼らは方言のバングラ語を話す子供たちで、英語はほとんど伝わりませんでした。 私たちに一番興味を示してくれた男の子と、言語は通じないながらも名前だけ紹介し合うことに成功しました。 彼の名前はアルファドーラといい、私たちが最後バスに乗り込む時までお見送りをしてくれました。
生まれた場所が違っただけで、こんなにも暮らしが異なることを改めて感じさせられ、 先進国で生きる私たちができることに想いを馳せることの重要さを学びました。

難民キャンプ訪問

ミャンマーからの難民ロヒンギャが暮らす難民キャンプを訪れました。
ロヒンギャの難民キャンプには今では約110万人もの人々が暮らしています。そのうち半分以上が子供で、30%が難民キャンプで生まれた子供達です。 実際に訪れても、本当に子供が多い印象を受けました。

アディスアベバ大学での交流
発表の様子
ディスカッションの様子

難民キャンプの中にある学校

ディスカッションの様子

難民キャンプの中にある学校

難民キャンプでは人々は竹とビニールでできた住居に暮らしています。 これは、いつかミャンマーに帰ることを目的としているため、燃やせる素材でつくっているのです。 彼らは毎月12.5ドルの食料配給を受け、生活しています。 当初は食料配給のみで、燃料がなかったことによる、周辺の森林伐採が問題となっていたことを受け、現在は毎月決まった日にLPGガスも配給しています。 キャンプの中は街のようになっており、学校や病院、消防、竹の加工工場、地域コミュニティーのための施設、 植物園など様々な施設がありました。

学校で先生をしているのは、難民としてくる前に先生をしていた方やボランティアの方で、 教育は英語とロヒンギャの言語で行われています。宗教上の理由から、男女は分けられて教育を受けています。

難民問題の唯一の解決策は、難民が安全に帰国できることです。しかし、ミャンマーの情勢はなかなか安定せずこの解決策の実現には非常に長い時間がかかることが予想されます。ロヒンギャの人々が広く受け入れられるために何ができるかを考えましたが、彼らの経済や宗教、文化などの制約が複雑に絡みあっているため、本当に難しい問題であることを改めて感じました。

ディスカッションの様子

キャンプ内で栽培されている植物

ディスカッションの様子

配給されるLPG(調理用のガス)

ダッカでの企業、政府系機関訪問

JICAバングラデシュ事務所訪問
日本の援助機関であるJICAを訪問し、バングラデシュにおけるJICAの活動について詳しく説明していただきました。 バングラデシュにおいては、非常に幅広い分野に対して支援を行っておりバングラデシュの2041年までの先進国入りという目標に対しての 貢献に力を入れていることがよくわかりました。

特に、バングラデシュは2026年にLDC(後発開発途上国)を卒業予定であり、特恵関税の優遇が外れます。 現在GDPが伸びている背景には、特恵関税に支えられた縫製業の発展がありますが、卒業後は産業の多角化が不可欠です。 その一環として、バングラデシュ政府と日本が連携し、ダッカ近郊で経済特区としての工業団地を建設中です。 JICAは住友商事とJVを組み、事業を推進するとともに、インフラ整備にも参画しています。 特に印象的だったのがマタバリ港の開発です。バングラデシュの海岸は遠浅が多く、大型船が入港できないため、他国での積み替えが必要となり貿易コストが高くなっています。 マタバリ湾は大型船が入港可能な唯一の深い港であり、今後の貿易拡大の鍵となります。 国の発展には地理的条件も大きく影響することを実感しました。

また、長年ロヒンギャ難民支援に携わる方のお話は、前日に訪れた難民キャンプの様子と重なり、深い学びとなりました。 キャンプでは識字率が低く、教育環境の厳しさが際立っています。より良い生活を求めて危険を承知で他国へ渡ろうとする人々や、 規制強化によって海上で命を落とす人がいる現実も知りました。キャンプ内にはギャングの存在もあり、誘拐や強制送還の問題もあると聞きました。 一方で、子どもたちが教師や医師、パイロット、NGO職員を夢見る姿が強く印象に残っています。 今すぐ直接支援することは難しくとも、この経験を忘れず、状況の改善を願い続けることの重要性を強く感じました。

ディスカッションの様子

JICAバングラデシュ事務所訪問

ディスカッションの様子

JETROダッカ事務所訪問


JETROダッカ事務所訪問
JETROを訪問し、日本企業がバングラデシュへ進出する際の課題について理解を深めました。発展途上国では制度や行政システムが十分に 整っていないこともあり、手続きが円滑に進まない場合があります。日本企業の進出意欲は高まっている一方で、情勢や未知の市場への不安も大きく、 JETROが情報提供や支援を通じて後押ししていることがよく分かりました。
貿易は国の発展に不可欠ですが、現在は港での厳しい検閲によりコンテナが長期間滞留する問題があります。この課題解決と貿易促進のため、 JETROはBSEZにおける新たな検閲体制の構築にも貢献しています。


工業団地(BSEZ)訪問
BSEZ(バングラデシュ経済特区)を訪問し、住友商事の日本人担当者から説明を受けた後、工業団地内を視察しました。入居企業は海外展開の拡大や製造コスト削減、 サプライチェーン強化を目的としており、バングラデシュは日本企業にとって「最後の進出先」とも言われています。ASEANで工業団地を展開してきた住友商事のノウハウを活かし、同国の経済発展にも貢献していることが分かりました。

団地内ではインフラ整備の徹底ぶりが印象的でした。中央のカナルは排水機能を兼ね、景観にも配慮されています。街中では排水設備や電線整備に課題が見られる一方、 団地内は排水・送電設備が整備され、安全対策も徹底されていました。サイクロンや洪水対策として盛り土を拡充し、水処理施設や再生可能エネルギー設備も導入されています。

建設現場では多くの現地従業員が働き、安全管理も徹底されていました。

また、住友商事は現地法人やKUMONと連携し、学校教育支援や職業訓練校の設立など地域貢献にも取り組んでいます。直接的な収益は大きくなくとも、教育や労働環境の改善が地域の安定につながり、結果的に事業にも好影響をもたらすという考えに強い感銘を受けました。仕事が社会にどのように役立つかを意識することの重要性を学び、将来は世界で社会に貢献できる存在になりたいと強く感じました。
ディスカッションの様子

JICAバングラデシュ事務所訪問

ディスカッションの様子

工業団地内の視察の様子

ディスカッションの様子

工業団地内には様々なインフラ設備が完備

大学交流

NSU(North South University)を訪問し、現地の大学生と交流しました。
ジェスチャーゲームでアイスブレイクをした後、日バ両国の自然災害について議論しました。 英語での交流でしたが、双方とも活発に意見を交わしていたのが印象的でした。
特にバングラデシュの学生は、日本の災害対策に強い関心を示し、耐震構造や防災グッズ、ハザードマップなどについて熱心に質問してくれました。 近年地震が増えていることも背景にあり、日本の取り組みを自国でも導入する重要性を語っていました。
また、サイクロンや洪水被害が深刻で、ダムの突然の放水が問題となる場合もあると知りました。 財政的制約から新設は容易ではなく、既存ダムの運用改善が重要であることを学びました。

学生との交流の後には、キャンパスツアーをしてくださりました。キャンパスは都心にあるのにもかかわらず非常に敷地が広く、学生の数も膨大でした。 キャンパス内には食堂や部室、ホールや図書館など、日本の大学と同じように施設が充実していました。 学生の多くが大学を誇りに思っており、勉学や各の活動に熱心に取り組んでいる姿が印象的でした。

ディスカッションの様子

大学交流の様子

ディスカッションの様子

大学交流の様子

ディスカッションの様子

キャンパスの中心での集合写真

ディスカッションの様子

集合写真

🗣 研修に参加しての感想

フィールドワークの重要性

日本にいながら、先生の講義と論文を読むことだけでは、理解しきれないものをフィールドワークを通じて得られたと感じています。
特に、現地にいる人々を実際に目にしたり、彼らとコミュニケーションをとったりしたことで、頭の中でわかっていた、 発展途上国が抱える問題による影響がより現実のものとして感じられました。
自分の目で見て、見たものをもとに自分で頭で考えることができる非常に貴重な機会をいただいた私たちは、 発展途上国が抱える問題について考え続け、現地の人々に寄り添いながら、複雑な問題に対しても希望を持ち続けられる人材でありたいです。

常に思考するということ

研修中の7日間は常に頭を動かしていました。
移動中もバングラデシュの街中を見て感じる疑問点や、問題点、解決方法をゼミのメンバーと共に議論し、 自分たちなりの解釈を深めることができたと感じています。多くの機関を訪問する機会をいただき、色々な人のお話を聞く中で、 自分たちで解釈したものをもとに新しく生まれた疑問点に関して対話し、 机に向かうだけでない学びの方法を改めて知ることができました。
今後のゼミでの学びでも、ゼミメンバーで切磋琢磨し、共に学び合えるより良い環境を作っていきたいです。

最後になりましたが、今回の海外研修は先生方をはじめ、現地の機関の方々、ドライバーやホテルの方のサポートなど数えきれない支えがあって成立した海外研修でした。皆様の協力のおかげで貴重な学びを得ることが出来ました、本当にありがとうございました。

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